十綱食堂
(とつなしょくどう)
[住所]福島市飯坂町十綱町1-2
[電話]024-542-4464
[営業時間]1200-1400,1700-1900
[定休日]上定
[アクセス]福島交通飯坂線飯坂温泉駅下車。徒歩1分。
[ジャンル]ソースカツ丼
[座席]テーブル2×2、小上がりに卓袱台4×1
[駐車場]無


 

 

ソースカツ丼 800円

 「駅前食堂《という本に魅せられてから、旅の合間に駅前食堂やB級グルメを楽しむようになった。このお店もその一つである。以下は「かめかめかめラ《からの抜粋である。
 福島交通飯坂線の電車のりばは阿武隈急行線と同じだった。ホームも同じで初めての人にとっては間違いやすい状況である。私が乗る車両は味気ない銀色の塗装がしてあった。飯坂線は全長わずか9.2kmであるが12もの駅があり駅間距離は短い。地元客らしき人たちでほぼ満席。笹谷駅で列車交換を行い、桜水駅には車両基地があった。車内には開業80周年記念切符の販売がお知らせされていた。買い物客や学生さんなどの乗り降りが続き活気がある。しばらくして終点の飯坂温泉駅に到着した。
 さて駅から歩いてすぐの十綱(とつな)食堂は直ちに見つかった。ホッとする間もなく、のれんがしまわれたままなのを発見。引き戸も閉まっている。あれっ定休日かな。資料によると「定休日:上定《となっている。運が悪い。でもバックアップとして道をはさんだ反対側にある仙臺屋(せんだいや)も用意しておいたので、そちらに行こうとするが、まだ未練がましく十綱食堂の店の前をゆっくりと歩いてみる。すると店の中に人の気配がするではないか。勝手口から中に声をかけてみる。
「ごめんください《
「はい《と、駅前食堂の本の中の写真に写っていた女性がこちらに顔を向けた。
「今日は営業されていますか?《
「はい、してますよ。今、開けますね《と。

 のんびりしているんだな。夜は午後5時から営業しているとのことだったが、お客さんがこないと店は開けないのかもしれない。店は想像していたよりもずっと狭くて、二人用のテーブル2卓と、小上がりに四人用の卓袱台が1卓あるだけである。店内のメニューには、かつ丼 800円、親子丼 700円、玉子丼 650円とある。というかそれだけである。駅前食堂の本には美味しそうなソースかつ丼が載っていたので、
「ソースかつ丼はできますか?《と聞くと、
「わかりました《と答えがかえってきた。
 出来上がるのを待っていると、出前の岡持をもった女性が店に帰ってきた。ふ~ん、出前もやっているんだ。そして肉屋さんの女性が肉を届けに来た。人の動きが多く、活気のある店である。この店は昭和26年に創業され昭和40年からはかつ丼専門店になったとの記載がある。古くから愛されていたのであろう。
 しばらくしてソースかつ丼が運ばれてきた。店吊入りの丼が店の心意気を静かに主張している。たくわんと福神漬けが小皿に入って戴っている。丼の蓋をあけると、なんともいえない心地よいソースの香りが漂う。美味しそうである。肉は柔らかくてたっぷりあり、キャベツはシャキシャキとした歯ごたえを保っている。そしてそれらをまとめている自家製のソース。甘味や酸味が利いているが突出もしていない。“洋風カツ丼”っていった感じだ。スラスラと胃袋におさまり満腹になった。お勘定は800円。
 支払いの時に、
「あのぉ、2-3年前に駅前食堂っていう本を読んでからこの店に一度は来てみたいと思っていたんですよ。今日は来られてよかったです《と話すと、
「それはそれは本当にありがとうございます。今日はどちらへお泊まりですか?《とちょっと照れくさそうな笑顔で答えてくれた。
「これから福島市内へ戻って明日は山形方面へ行く予定なんです《
「お気をつけていってらっしゃい《
 お腹とともに心も和んだところで店を出る。 (2004/08)
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