かめかめ・かめラ
大井川鐵道紀行

(静岡県金谷町〜川根町〜中川根町〜本川根町〜静岡市)
(2004/5/2)

 伊勢原6時43分発の小田急線に乗り小田原には7時18分着。そして小田原7時35分発のこだま401号で静岡へ向かう。静岡からは東海道線下り8時28分発浜松行きに乗り換えて金谷には9時1分着。今日は大井川鐵道(正式には“鉄道”じゃなくて“鐵道”らしい)に乗るのだ。

大井川鐵道金谷駅

 大井川鐵道とは、静岡県中部の金谷駅と井川ダムのある井川駅とをほぼ南北に結ぶ全長65kmの路線で、本線(金谷〜千頭)と井川線(千頭〜井川)に分れている。この鉄道の魅力は、本線にSLが走ることと、日本一急勾配の井川線での歯型レールを使用したアプト式線路である。ではと、3日前に大井川鐵道本社に電話で予約したところすでに一杯で、「立ってなら乗ることができます」との返事。立ってでも金谷10時4分発のSLに乗ろうか、普通の列車で行こうかとその時点でまだ迷っていた。とりあえず駅の窓口へ向かうが家族連れなどで大混雑。大井川鐵道の本社は金谷から一つ先の新金谷駅にありSLの整備などもそこで行っているとの情報があったので、まずは新金谷を目指す。切符ではなくて乗車証明書をあわててもらい、9時7分発の列車にギリギリで乗ることができた。やはりゴールデンウイークで、しかも今日は気候が穏やかなので人出が大井、じゃなくて、多いのだろう(寒)。

新金谷駅点検中のSL

 9時12分に新金谷着。点検中のSLをパチリ。写真ではわからないが汽笛の音色が何とも言えずに郷愁を誘う。新金谷の駅周辺はSLの写真を撮りに来る人などもいて、そこそこ賑やかである。台車を利用した休憩所(ベンチ)もあった。

台車を利用したベンチSL「かわね路号」立席承知の乗車券

 窓口はここでも大混雑。なかなか行列が減らない。やっとのことで10時11分発のSLかわね路号の「立席承知」という印鑑の押されたチケットを購入。実は新金谷駅の構内には、以前都内で営業していた「まるさん」というラーメン屋さんがあり、平日は10時30分からの営業だが、休日は9時30分からの営業だという情報も得た。うまく行けば「まるさん」で朝食代わりにラーメンを一杯食べてからSLに乗ろうと企んでいたのだが、準備中の札のかかるガラス戸をあけて伺うと10時頃の開店だそうだ。そううまくは行くまい。よし、予定は決まった! SLには乗らずに新金谷9時49分発の千頭行きワンマン列車に乗って、千頭で少しゆっくりしよう。千頭以降がかなりタイトなスケジュールだからね。

大井川の流れ茶畑

 この大井川鐵道本線は観光路線としてだけでなく、近隣住民の足としても機能している。駅数がかなり多く、何人かの人たちが乗降している。本線は大井川の流れに沿って走行しており、比較的ゆったりとした流れを堪能することができる。また周囲は茶畑が多く、茶摘みをしている姿も見受けられた。山の斜面に目をやるとロープウェー式の荷台に、摘んだ茶葉を載せて斜面を滑らせている光景も見られた。

千頭駅「音入れの滝」(トイレ)

 千頭には10時57分に到着。改札を出て、立ち食いそば屋できつねうどん(350円)を食べる。腹が減ってりゃ何でもうまい!(笑)。駅周辺を散策すると、人工の滝がある。名前がついていて「音入れの滝」と掲示されている。滝の後ろがお手洗いになっているのである。だから名前が「おトイレ」なんだなぁ。こういう洒落のセンスって私は大好きだ(笑)。

アプト式のラックレール

 千頭駅に隣接したSL資料館へ。そこには大井川鐵道の70年間の歴史を刻んだ写真や資料がところ狭しと展示されている。アプト式(アミノ式ではない)のラックレール(歯形)も展示されていた。この歯形を利用して急勾配を登っていくんだ。

千頭駅に到着するSL(1)千頭駅に到着するSL(2)

 そうこうしている内にSLが到着した。SLには乗らなかったが、こういう写真は乗客には撮れないのである。

乗客がSLの撮影会

 下車した後も乗客がさながらSLの撮影会。家族サービスと言いながら、本当はお父さんが一番楽しんでいた家族が多かったようだ(爆)。

千頭駅構内のSL機関車トーマス

 さてこの千頭駅には多くのSLがある。おまけに“機関車トーマス”も。

川根茶ののぼり川根茶

 静岡県自体がお茶の産地をして有名だが、この辺りは特に川根茶として知られている。“川根茶”“川根ちゃ”“かわねちゃ”“かわねーちゃ”“買わねーちゃ?”と不規則五段活用がされ、それを神の声として聞いてしまった私は駅前のお土産屋さんで川根茶を買ってしまった。

井川線の硬券

井川線の列車新緑の山々

 さぁ、ついに井川線だ。“井川”なんて言葉を聞くと、阪神タイガースファンと井川遥ファンが喜んじゃいそうですが、勝手に喜んでください(あっ、井川遥は好きです)。ちなみに“井川”は「いかわ」と発音する。千頭12時10分発の井川線トロッコ列車は8両編成。急な山道を健気に進む。車掌さんのアナウンスは観光ガイドのように適切であり、見どころになると列車のスピードが遅くなるといううれしいサービスがある。この列車に乗っていることが観光旅行なんだ。

両国吊橋

 川根両国駅をすぎて右側に見えてくるのが両国吊橋。見どころは進行方向右側に偏っている。

アプト式レール

 さてアプトいちしろ駅で、アプト式電気機関車を後ろに連結する。長島ダムが建設されたので井川線が分断され、新しい路線を作りその一部が急勾配になったので導入したのがアプト式なのである。

連結作業中集まった人々

 「連結する場面を見たい人は最後尾に来て下さい」とのアナウンスで多くの人(自分もそうだが)が連結部へ。ここにはトイレもあるのでトイレ休憩も可能。しかし急がないと乗り遅れるかも。

新しい路線を登る(1)新しい路線を登る(2)

 写真でどこまで伝わるか自信がないが、かなりの急勾配だ。次の長島ダム駅までの1.5kmがアプト式区間だ。

長島ダム旧線のトンネル(長島ダム隣接)

 右手に長島ダムが見えてきた。ダムの左下に旧線のトンネルが口を開けていた。

レインボーブリッジ

 長島ダム湖(接岨湖)にかかるレインボーブリッジ。

旧線のトンネル(レインボーブリッジ付近)旧線の鉄橋(レインボーブリッジ付近)

 そのレインボーブリッジから左手に見える旧線のトンネルと鉄橋。

ハッピーベル(奥大井湖上駅)

 奥大井湖上駅には風の忘れ物と名付けられたハッピーベルや展望台・休憩所などの設備が整っていて、周囲を散策するハイキングコースもある。

関の沢鉄橋から真下を見る深く分け入った大井川の渓谷

 テレビや雑誌などでも有名な関の沢鉄橋。高さなんと100m! 列車の中から鉄橋の下を見るとかなりの恐怖感で、目がくらんでくる。

井川ダム井川駅

 右手に井川ダムが見えてくると終点の井川はもうすぐだ。ここに取り上げた見どころ以外でも、車窓を眺めているだけで癒される、それが井川線だ。時刻表通りに13時55分に井川駅に到着した。多くの人がここから千頭、そして金谷と逆コースをたどっていくのであろう。

井川駅前バス停

 しかし私はしずてつジャストラインの路線バスを利用して静岡駅に出ることにしていた。井川駅前停留所を14時10分に出るのでちょうどよい。

バス外観(途中で撮影)ガイドさん

 小型のバスを想像していたが立派な観光バスタイプ。バスガイドさんも同乗している。静岡駅着は16時30分の予定。2時間20分かかるが、千頭〜金谷回りで静岡に行くには最短でも18時30分になってしまい2時間のロスとなる。ロスはともかく、同じルートを戻るよりも新たなルートの方が新鮮に感じる。今回の“井川行き”を決行した要因の一つにこのバスの発見がある。バスは富士見峠〜横沢(トイレ休憩)を経由して静岡駅に到着したのが16時25分と予定より5分早かった。お腹が減ってきたので、腹ごしらえしてから静岡駅のみどりの窓口へ。

静岡駅ホーム表示特急東海4号

 さてここからは来た時のように新幹線で小田原へ行くのが普通の人。でも私は普通ではなかった(笑)。静岡始発17時23分の特急東海4号に乗車したのであった。特急東海なんてこんな時に乗らないとまず乗らないもんね。新幹線よりも時間はかかる(新幹線45〜50分 vs 特急74分)が料金は530円安い。指定席はガラガラだった。今回の旅の交通機関で一番空いていたのは、この特急東海の静岡〜熱海区間であった。さすがに熱海や湯河原からは乗客が増えてきて賑やかになってきた。定刻通りに小田原へ18時37分着。駅弁の鯛めしをお土産に買おうとしたがすでに売切れ。そのまま小田急線で帰ってきた。心地よい疲れを感じた。

 さて、今回の旅程は、伊勢原〜小田原(小田急線・35分・360円)、小田原〜金谷(新幹線と東海道線・1時間26分・4,600円)、金谷〜新金谷(大井川鐵道本線・5分・150円)、新金谷〜千頭(大井川鐵道本線・1時間8分・2,280円)、千頭〜井川(大井川鐵道井川線・1時間45分・1,280円)、井川〜静岡(路線バス・2時間15分・1,850円)、静岡〜小田原(東海道線・1時間15分・3,480円)、小田原〜伊勢原(小田急線・32分・360円)であった。合計すると、費用は14,360円、全行程は12時間31分で乗車時間は正味8時間59分であった。正味の乗車時間は全行程の72%だ。のんびりとできたが、公共交通機関が好きでないとちょっと大変かな。