かめかめ・かめラ
中国・北近畿・若狭紀行
(岡山県〜広島県〜島根県〜鳥取県〜兵庫県〜京都府〜福井県)
(2009/10/8-12)

【1 狭隘な地に線路が続く】

(2009/10/8-11)(記 2009/11/3)


 岡山へ出張である。できるだけ仕事に影響しないように寝台特急を利用する。というよりも寝台特急に乗りたい気持ちが強いのである(笑) 前日には台風18号が上陸し、かなりの被害をもたらした。寝台特急サンライズも前日は運休になっていた。8日は昼前から晴れ間が見られ、午後には快晴になった。暑いくらいである。

 厚木での仕事を19時に終えて、本厚木から小田急線で町田へ。そして横浜線で新横浜へ向かう。そう、新横浜ラーメン博物館で夕食をとるのである。我ながら見事な計画である(笑)。腹ごしらえをしてから合計1523.9kmで運賃16,070円の片道きっぷをとり出して新横浜駅の改札を通った。横浜へ移動し、帰宅を急ぐ会社員の多い東海道本線のホームで寝台特急サンライズ瀬戸/出雲を待つ。サンライズ瀬戸は高松行き、サンライズ出雲は出雲市行きであるが、岡山までは連結して運転する。横浜駅に2分遅れで到着した列車だが、出発は8分遅れだった。しばらくして「東京駅で間違えて乗った人がいたので出発が遅れました」と車内アナウンスがあった。そんなに間違える車体ではないのに、酔っぱらってでもいたのかなぁ。


今回の乗車券(使用後なので岡山・新見・三次・江津・西舞鶴などの途中下車印と無効印がある)

 横浜駅を出てからしばらくして車内検札があった。特急券と乗車券を見せると怪訝な顔をされ「米原からは・・・?」と言われる。「横浜市内〜米原」の乗車券なのでやむを得ないが、「いろいろと経由して米原に行くのです」と言うと、「あっ、大変失礼しました。伯備・芸備・三江・山陰・・・ですか。すごいですね」と驚かれる。沼津を出発したのは23時40分と定刻に戻っていた。24時頃にラウンジに行くと、2人の男がビール片手に静かに話しをしており、また若いカップルは二人で無言でゲームに興じていた。カップルでも無言でゲームなのかい? 理解に苦しむのは年をとったせいなのだろうか?

 いつの間にか眠りにつき、気付いた時には姫路に着いていた。午前5時25分頃である。それからさらにウトウトして6時頃に目覚めた。今日(9日)の仕事のために、ヒゲを剃り、薄くなりはじめた髪の毛をセットし、スーツを着て降りる準備をする。6時27分定刻に岡山に到着した。乗客はカメラや携帯電話を片手に列車の中央部に集まっている。これからサンライズ瀬戸と出雲の切り離し作業が行われるのでそれを見にいっているのだ。私は以前に見ているので遠慮して、岡山駅西口にあるホテルへ手荷物を預けに行った。そしてまだ時間があるので、一日乗車券を買って市内電車のミニ旅を楽しんだ。

 
市内電車

 金曜日の朝なので高校生や会社員が多い。東山と清輝橋の二つの路線を制覇してから仕事に乗り込む。午前中の仕事は無事に終わり、午後も仕事をこなしてから、同僚達と美味しいお酒で乾杯する。

 10日の朝からは鉄道の旅に出る。まずは岡山から新見へ向かう。新見駅は、陰陽連絡船の雄である伯備線と、姫路からの姫新線、そして中国山地を広島へ向かう芸備線の集まる鉄道の要衝である。特急やくもを使えば1時間で着くが、あえて普通列車に乗り込む。4両編成の転換型クロスシートである。向かい側の座席には明らかに鉄ちゃんのオヤジがおり、駅のホームや車窓を見ながら盛んにメモを取っている。私もその様子を見ながらメモを取っているので人のことは言えない(笑)。後ろの座席では大きな声で携帯電話をかけている若い男がいる。どこでも車内マナーが悪いなぁ。これからの旅が思いやられる。列車は1時間40分余をかけて新見駅に到着した。高梁川に沿って走る伯備線は電化されており列車スピードは早い。

 
新見行き列車@岡山駅 ◇ 高梁川(美袋ー備中広瀬)


高梁川(美袋ー備中広瀬)

 新見駅に到着した。 新見で昼食をとり、駅の近くの街並みをゆっくりと楽しむ。昔ながらの街並みが残っているし、高梁川河床甌穴(おうけつ)群などの見どころがある。そして次の芸備線に乗るために新見駅に戻る。気温が低くなってきたようなのでブルゾンを着る。

 
新見駅名標 ◇ 新見駅舎

 
レトロな街並み ◇ レトロな中島ビル

 
高梁川河床甌穴(おうけつ)群

 さて、芸備線の途中の東城から備後落合までは一日三本しか列車がないため、三次まで乗り継ぐには5時17分発、12時47分発、18時12分発のどれかに乗るしかない。12時47分の列車が10分前に入線してきた。単行(1両)のセミクロス・ワンマンである。前方が見える座席を確保することができた。乗客は3割ほどで、鉄ちゃんはわずか3人ほどである。

 
備後落合行き列車 ◇ ホーム

 この期間は青春18きっぷに似た「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」の販売期間であるので、もっと多くの鉄ちゃんが乗っていると思っていたが、どうしてだろう? しかしすぐに杞憂に終わる。岡山からの12時43分着の列車から続々と鉄ちゃんが乗ってきた。なんとその内の一人は私から前方の眺望を遮る位置に立ったのだ。これだから鉄ちゃんは困る。これからの旅が思いやられる(二回目)。座席はまだまだたくさん空いているのにである。結局、20人ほどの鉄ちゃんを含む5割ほどの乗客を乗せた列車は定刻に出発した。縦横に身体の大きな鉄ちゃんのために前方の視界が遮られたので横の車窓を楽しむことにする。

 
車窓(東城〜備後八幡) ◇ 成羽川(内名駅付近)


東城-備後八幡1


東城-備後八幡2


備中八幡-内名(成羽川)

 
成羽川(内名〜小奴可) ◇ 小奴可駅(昔のホームの遺産)

 中国山地はそれほど急峻な山々が多いわけではないが、路線が比較的古いためにトンネルが少なく、川沿いの狭い場所に線路が敷かれているところが多い。トンネルが少ないのは技術的な問題もあるし、蒸気機関車の煙対策のためでもあると思われる。いずれにしても徐行する場所も多く、いかにもローカル線といった印象が強い。実際に、東城〜備後八幡〜内名〜小奴可〜道後山〜備後落合の区間は見どころがたくさんある。発車してから私の目の前にずっと立っている鉄ちゃんの左脇をすり抜け、ちょこちょこと最前線に移動して写真を撮影してきた。


道後山-備後落合

こうして51.0kmの距離を83分の所要時間であり、表定速度36.9km/時というゆっくりとしたローカル線の旅の一つが終わった。

 備後落合駅芸備線木次線の接続駅で鉄道の要衝の一つであった。私の乗った列車が14時10分に備後落合駅に到着すると、三次方面からは13時58分に、そして木次方面からは14時2分にすでに列車が到着していた。こんな山間の駅にほぼ同時に三方向から列車が来るのである。

 
備後落合駅名標 ◇ 備後落合駅舎

 各車両に乗っていた鉄ちゃん達はあっちこっちに散って写真やビデオの撮影に余念がない。そんな鉄ちゃん達を撮影していたほうが楽しいかも知れない。そして鉄ちゃん達は乗り換えて列車とともに去っていくのである。まず14時15分に木次線の出雲横田行きが、14時18分に新見行きが順次出発し、私を乗せた三次行きが14時36分に最後に出発した。

 
木次線(出雲横田行き) ◇ 芸備線(三次行き)(左)と芸備線(新見行き)(右)

 列車には先ほどの大きな男がいて、先ほどの列車で私が座っていた場所と同じ場所に座っていた。ここで私が彼の前に立って前方を眺めていれば、先ほどのお返しになるのだが、そんな子供じみたことをする私ではない(笑)。鉄ちゃんイメージアップ大作戦は今日も遂行することになる。

 
木次線との分岐


備後落合〜比婆山(右に木次線が分岐)

 備後落合〜比婆山間は西城川沿いの狭い土地に敷かれており、なかなかスリルのある区間である。下り勾配もかなりあり、列車はゆっくりゆっくりと歩くように走っている。平坦な場所でも、地盤が悪いのか徐行する区間もあり楽しめる。結局のところこの区間も45.7kmの距離を82分かかり、表定速度は33.4km/時となり、先ほどの区間よりもさらに遅いことになる。


備後落合〜比婆山


高〜備後庄原

 三次には15時58分に到着し、少し早いが今日の旅はこれで終える。三江線に乗るのだが、夜に乗ってもつまらないので明朝の始発列車に乗る予定なのだ。三次駅から徒歩10分ほどのホテルに宿泊した。

  4時45分にセットした目覚まし時計のアラーム音を聞くこともなく、遠足の朝の小学生のように4時30分ころに自然に目覚めてしまった。三次駅5時47分発の三江線の始発列車に乗るのである。これを逃すと次の列車はなんと10時3分発なので、始発列車に乗り遅れると旅の計画が大幅に狂うことになる。小田急線などの首都圏では全く考えられないことである。まだ真っ暗の中をホテルをチェックアウトして三次駅に向かう。三次駅も鉄道の要衝の一つであり、芸備線三江線福塩線の線路が交わるところである。

 
三次駅名標 ◇ 浜田行き三江線列車@口羽駅

 切り欠き型0番ホームに単行(1両)でセミクロス・ワンマンの始発列車は停っており、発車の準備をしていた。一番乗りして発車を待つ。鉄ちゃん10人ほどと地元の乗客3人を乗せて定刻の5時47分に三次駅を出発した。まだまだ周囲は暗い。所木、信木を過ぎてから少しずつ明るくなってきた。口羽駅で29分間停車するので、駅の周辺を散策する。屋根の瓦は石州瓦だろうか、独特の深い赤色をしている。

 
口羽駅舎 ◇ 三江線全通記念碑@口羽駅近く

 三次と江津を結ぶ三江線は中国地方一の大河である江の川に沿って走るローカル線である。三次は広島県に属するが、日本海に注ぐ江の川の流域にある。つまり三次に降った雨は日本海に注ぐのである。三江線の両端である三次〜口羽間と浜原〜江津間は古くからの路線なのでトンネルが少なくてローカル色が強い。一方、比較的新しい口羽〜浜原間(昭和50年開業)はトンネルが多く、徐行区間も少ない。

 口羽駅からはかなりのスピード(といってもそんなに早くないが)で列車は進む。宇都井(うづい)駅は地上30mに設置されており、エレベータやエスカレータはなく、116段の階段で昇降するしかないという一風変わった駅として有名だ。なんと、、ここで、3人の鉄ちゃんが降りたのである。1日の平均乗降客数が4人の駅でだ。列車を降りるとカメラを片手にすぐに進行方向に向かい、列車にレンズを向ける。さすがに鉄ちゃんである。


地上30mの宇都井駅に到着

 
宇都井駅ホームから下を見下ろす ◇ 車窓(宇都井〜石見都賀)


宇都井〜石見都賀(速い)

 浜原からはまた純ローカル線の風情に戻る。ここからはほぼ江の川の左岸に沿って走る。江の川のゆったりとした流れを見る一方で、狭い土地によく線路を敷いたと思われるような場所も多く、徐行区間も多くなるのだが、それがまた楽しい。


竹〜木路原(江の川)


川平〜千金

 
車窓(鹿賀〜石見川越) ◇ 車窓(川戸〜川平)


江津本町〜江津(右から山陰本線が合流)

 車窓をたっぷりと楽しんだ後、江津駅には定刻に到着した。108.1kmの距離を224分なので表定速度は29.0km/時と、かなりゆっくりな列車であった。この列車はここで38分間停車したのちに浜田へ向かうが、私は下車し出雲市方面に向かうことにする。
【旅程】
10/8-9
横 浜 22:24〜06:27 岡 山 東海道本線/山陽本線 寝台特急サンライズ瀬戸 Bソロ寝台料金6,300円+特急券3,150円+
 運賃 横浜市内〜米原(東海道〜山陽〜伯備〜芸備〜三江〜山陰〜舞鶴〜小浜〜北陸)16,070円

10/10
岡 山 09:18〜11:00 新 見 山陽本線/伯備線
新 見 12:47〜14:10備後落合 伯備線/芸備線
備後落合14:36〜15:58 三 次 芸備線

10/11
三 次 05:47〜09:31 江 津 三江線
【1 狭隘な地に線路が続く】  【2 長大なローカル本線が海沿いを走る】  【3 緑と青の織りなす美しさ】