かめかめ・かめラ
大井川鐵道オフミ
(静岡県)
(2018/3/31-4/1)

【3 SLとミステリートンネル】
(2018/4/1)(記 2018/6/22)

21SL急行さくら:大井川鐵道オフミ




 SL急行「かわね路1号」が入線したのでホームへ移動する。


 SL機関車を写真に収め、客車へ移動する。


 7両の客車のうち、私たちの座席は最後尾の1号車だ。






 昭和10年代に作られたものだ。できるだけそのまま使用するのが大井川鉄道のコンセプトなので壁際に灰皿がついているが全席禁煙である。窓枠も木製である。暖房はあるが冷房はついていない。天井には扇風機があった。窓は自由に開けてよいらしい。
22新金谷〜家山:大井川鐵道オフミ




 お腹が空いたので駅弁を食べる。H氏とU氏は大井川ふるさと弁当、B氏は茶飯弁当と地元感たっぷりだが、私はなぜか日高つぶめし弁当。全く地元と関係ない(笑)。実は、日高つぶめし弁当が売っているのを見たとき、昔、日高本線に乗った時に静内駅で買い車内で食べたつぶめし弁当の美味しさが蘇ってきたのである。そういうわけで衝動的につぶめし弁当を買ってしまったのはここだけの秘密である(笑)。そのつぶめし弁当は予想通りに美味しかった。




 ちなみに静内で買ったつぶめし弁当はこちらである。やはり地元の方が少し気合いが入っているのかな(笑)。


 SL急行が出発した。名物アテンダントがハーモニカを吹きながら車内を移動している。出発してしばらくし神尾駅が近づいてくると、右側から大井川が寄り添ってくる。広くて白い河原に大井川の青い水面が映える。南アルプスの伏流水にはコバルトが含まれ、そのために青い色に見えるという蘊蓄をH氏は披露した。なるほど確かに青く見える。青い→あおい→おおい→大井川になったのだろうか(笑)。

 大井川鐵道には難読駅名が大井。じゃなかった、多い(笑)。五和(ごか)駅、大和田(おわだ)駅、抜里(ぬくり)駅、地名(じな)駅などがある。大井川沿いにのんびり走っていると停車駅の一つの家山駅が近づいてきた。




 家山駅周辺では桜まつりが開かれていて多くの人で賑わっていた。満開の桜、葉の出始めた桜、散り始めた桜などが入り混じっている。おそらく種類が違うのだろう。そのため桜吹雪の中で満開の桜を見ることができる。美しい風景の瞬間である。

 桜が満開の時期に鉄旅をするのは自分は初めてである。なかなかいいもんだ。

新金谷1152-1309千頭 大井川鐵道本線 SL急行 「かわね路1号」千頭行き
23家山〜千頭:大井川鐵道オフミ


 家山駅でおそらく桜まつりに参加するであろう観光客が大量下車したため座席が空いた。席を自由に移っていいですよ、と車内アナウンスが流れている。家山駅を出てすぐに、数多くの鯉のぼりが川をまたいで風になびいているのが見えた。


 川根温泉笹間渡駅の手前で初めて大井川を渡る。その橋梁の上からは、川根温泉ふれあいの泉の露天風呂から手を振る人々の姿がよく見える。テレビでもおなじみの光景である。


 塩郷駅の近くには塩郷の吊り橋がある。正式には久野脇橋だが恋金橋とも呼ばれ、長さ220m、高さ11mとかなりの長さを誇る。


 塩郷ダム(塩郷堰堤)により堰き止められた塩郷貯水池が左に見える。




 下泉駅、駿河徳山駅に停車したSL急行「かわね路1号」は千頭駅に到着した。車内で出たゴミなどはそのまま置いていっていいという車内アナウンスが流れた。観光に特化している鉄道である。

新金谷1152-1309千頭 大井川鐵道本線 SL急行 「かわね路1号」千頭行き
24千頭駅:大井川鐵道オフミ


 千頭駅に到着するときに左手に転車台が見えた。




 千頭駅の改札口に向かってみんなが移動する。


 先頭の蒸気機関車をバックに記念写真を撮る人が後を絶たない。
25千頭〜奥泉:大井川鐵道オフミ




 ここからは大井川鐵道井川線、通称南アルプスあぷとラインに乗り換える。トロッコ列車の6両編成で、車内は独立しており車両同士で行き来はできない。






 二つのツアー客も乗車しているアナウンスがあった。井川駅を出発すると次は川根両国駅だ。大井川が駿河国と遠州国を分けていたためこの名前がある。そしてここには車両基地がある。一つのツアーはここで下車するようアナウンスがあった。たった一駅だけではあぷとラインの魅力はわからないと思うのだが、トロッコ列車に乗ったこと自体が観光なのかな。ちなみにもう一つのツアーは接岨峡温泉駅で下車するようだ。




 川根両国駅を出るとすぐにつり橋の下を通過する。これは両国吊橋といい長さ145m、高さ8mで、つり橋の中でもあまり揺れず安定しているようだ。


 静岡県は日本一のお茶どころだが、川根茶はその中でも高品質で人気がある。

 川根両国の次は沢間である。ホッパーらしき構造物が残っていた。昔ここから森林鉄道が分岐していたようだ。これもH氏の情報である。このあたりの線路は急斜面に作られており、とても隘路となっている。

 帰宅後に森林鉄道のことを調べてみた。名前は千頭森林鉄道といい、1968年に全線廃止となっている。支線を含めると総延長45.8kmとかなり長い。詳細な廃線レポートもある。

 昔の林業が最盛期にはこのような森林鉄道が各地にあったようだ。木々を伐採し我が国の高度経済成長を支えてくれたのだろう。伐採された後に植林された杉の花粉に悩まされるとは、その時には思いもよらなかったのだろう。




 次の駅は土本。この駅周辺の四軒中三軒の名字が土本であることが車内アナウンスで紹介されて、少し笑い声がおきる。次の川根小山駅で列車交換。千頭行きに乗り換える人は車掌さんに伝えるようアナウンスがあった。そして大きな駅の奥泉駅に到着した。寸又峡温泉行きのバスはここで乗り換えである。

千頭1335-1427長島ダム 大井川鐵道井川線(南アルプスあぷとライン) 井川行き
26奥泉〜長島ダム:大井川鐵道オフミ

 寸又峡温泉行きのバスは千頭から出ており、千頭→奥泉→寸又峡温泉のコースとなっている。奥泉からは約30分で寸又峡温泉に着くようだ。ちなみに千頭→奥泉間はバスではわずか10分であり、井川線の約30分と比べるとバスの方がかなり早い。これは閑蔵行きのバスでも同様で、奥泉→閑蔵間はバスでは約20分で、井川線では約1時間かかる。


 赤い大きな橋は泉大橋である。


 このあたりの大井川は渓谷の趣がある。


 奥泉の次はアプトいちしろである。




 ここから次の長島ダム駅まではアプト区間でありアプト式専用の機関車が最後尾に連結される。その作業を見ることができるが、人だかりでいっぱいである。


 アプト区間の勾配は最大90パーミルであり鉄道としては我が国最大である。座っているとわかりにくいが、車内で立ってみると実感できる。


 正面に長島ダムが見えて来る。放水しているようだ。


 長島ダム駅に着いた。ここで下車する。




 長島ダム駅で機関車を切り離す。この駅で下車したのは我々四人だけだった。

千頭1335-1427長島ダム 大井川鐵道井川線(南アルプスあぷとライン) 井川行き
27奥泉〜長島ダム:大井川鐵道オフミ


 長島ダム駅と山桜

 この長島ダムの建設のために1990年(平成2年)にアプトいちしろ〜接岨峡温泉を新線に変更した。その際、アプトいちしろ〜長島ダム間をアプト式とし、駅名も川根一代駅を アプトいちしろ駅へ、川根長島駅を接岨峡温泉駅に改称し、長島ダム駅・ひらんだ駅・奥大井湖上駅が開業した。そのかわり大加島仮乗降場・川根唐沢駅・犬間駅が廃止となった。






 長島ダムによってせき止められた人造湖は接岨湖と呼ばれる。接岨湖と書かれた記念碑の前で記念写真。




 平成13年に完成した長島ダムは型式が重力式コンクリートダムで、高さは109.0m、長さ308mである。大井川水系唯一の多目的ダムであり水力発電はおこなっていない。水力発電を行わないダムとしても大井川本川では唯一となる。ダム最上部の展望台から下を眺め、そして下り坂をてくてく下り大樽広場へ。




 この下り坂の斜面は以前は芝桜が一面に咲き誇っていたようだ。鹿などによる食害で今は無残な姿になっている。
28  18号トンネル・飛沫橋:大井川鐵道オフミ


 すでに始まっているが長島ダムからアプトいちしろ駅までは「旧井川線トンネルミステリーウォーキング」というハイキングコースになっている。




 大樽広場の一角に井川線の旧線の18号トンネルがある。レールはないが枕木の名残は残っている。トンネルの中は20mほどでダム本体により遮られている。






 放水している水のしぶきがかかる場所にある飛沫(しぶき)橋を渡り、右に曲がってさらに進む。
29  17号トンネル:大井川鐵道オフミ


 しばらく進むとミステリートンネル入口という看板があった。アプトいちしろキャンプ場も同じ方向である。


 そちらへ向かうと17号トンネルがあった。ここは長さ128mで通り抜けられる。内部はコンクリート打ちっぱなしから、やがて手堀りの岩石むきだしとなる。ミステリー感が湧いてくる。




 トンネルを出て右斜面を眺めるとアプト式区間の急勾配がはっきりと確認できる。
30ミステリートンネル:大井川鐵道オフミ




 そしてアプトいちしろキャンプ場を過ぎるとメーンイベントの16号トンネルの入り口が近づいてくる。ここは以前は通り抜けできなかったようだが、整備されて通れるようになった。ボランティアの方々の努力があったようだ。このトンネルは長さ375mと長いので懐中電灯が必要である。


からくり(1)

 H氏持参の懐中電灯を頼りに四人が歩く。途中から私もスマホのライトをつけて歩く。内部は先ほどと同じくコンクリート打ちっぱなしから、岩石むきだしとなっている。さらに進んでいくと人感センサーで急に明るくなり、ちょっとしたからくりがあった。


からくり(2)

 そしてしばらく行くとまたからくりが。




からくり(3)

 そして三つ目のからくりが終わるとトンネルの出口になった。


 出口の右側には古い駅名標があった。川根市代(かわねいちしろ)と書いてある。旧線の川根市代駅だ。


 正面に見える15号トンネルからこちらへまっすぐに繋がっていたようである。
31アプトいちしろ駅:大井川鐵道オフミ




 線路を渡ると目の前に市代吊橋が現れた。これは昭和11年に鉄道用吊橋として建設されたものだ。つまり旧線よりも古い時代の遺産で、このつり橋の上を鉄道が走っていたのだと思うと感慨深い。


 『産業遺産 「市代吊橋」     「市代吊橋」は、昭和11年(1936年)大井川電力(株)が大井川ダム建設に伴い、木材の流送を補償するため、鉄道用吊橋として建設された。昭和29年鉄道を井川まで延長する際、ルートが変更となり、市代吊橋は通路橋となった。若干の改造は行われているが、鉄道用吊橋の構造をよく残し、橋梁の歴史を語る貴重な吊橋である。<吊橋仕様>製造者 三菱重工業(株)、製造年 昭和11年、型式 サスペンショントラス、径間 106.74m、幅員 2.12m、制限荷重 8トン、産業遺産認証者 産業考古学会、認証年月日 平成12年5月20日』


 駅舎の横の桜がきれいだった。




 アプト式のラックレールの構造がよくわかる。



 しばしの休憩の後、千頭行きの列車に乗り込む。大井川鉄道の旅もそろそろ終焉を迎えようとしている。

アプトいちしろ1556-1634千頭 大井川鐵道井川線 千頭行き
32千頭〜金谷〜静岡〜小田原:大井川鐵道オフミ




 千頭からは普通列車で金谷を目指す。今度は南海電鉄の車両である。疲れていたのか、ウトウトしてしまった。家山からは桜まつり帰りの乗客が大量に乗車した。新金谷での降車客はそれほど多くなく、多くは終点の金谷まで乗っていた。


 金谷からは東海道線の上り列車に乗り込む。H氏とU氏と私は静岡で下車して新幹線に乗り換える。B氏はこのまま普通列車を熱海で乗り換えて横浜まで行くようだ。




 H氏とU氏はひかりで東京までなので、静岡でしばらく待ち時間があるようだ。私はそれほど待ち時間がなかったので、2人に別れを告げて、すぐに乗り換え改札口から新幹線ホームに入った。




 売店でまぐろメンチバーガーを買う。最後の最後でやっと静岡らしい食べ物を食べることになった。

 小田原からは快速急行で伊勢原へ。快速急行といっても伊勢原までだと停車駅は急行と全く同じである。

千頭1651-1802金谷 大井川鐵道本線 金谷行き(南海車両)
金谷1811-1843静岡 東海道本線 熱海行き
静岡1852-1936小田原 東海道新幹線 こだま672号 東京行き
小田原1953-2030伊勢原 小田急線 快速急行 新宿行き

 心地よい疲れとともに帰宅した。今回の大井川鉄道の旅はすべてH氏の手配で行われた。鉄旅でこれだけ準備しなかったのは珍しい。楽ではあったが、その分H氏の負担が大きかったかと思う。H氏に改めて感謝したい。
【1 松田から御殿場線】  【2 大井川鐵道へ】  【3 SLとミステリートンネル】